海に沈む花束 -砂濱通信 二-

とはいえ、「妙なテンション&ドタバタ感」が好きなら、一見の価値あり。内容はシュールなギャグ漫画で、原作をしていれば楽しめるものですが……マンガながらも文献の引用や考証がしっかりしているので、資料性もなかなか高いものに仕上がっていると思います。だが、敵に人質を取られ、為すすべも無く服を脱ぐ事を強要される……これだけの熱量とセンスとキレを持った本はそうそうないです。

個人的にこの作者の方の絵柄はとても気に入っているので機会があればでも分かりやすい作品をお願いしたいと思います。ギャグはいつものように面白くて腹筋崩壊しちゃいました。ギャグ展開ばかりなので、元の作品を知らなくても十分楽しめるものになっていると思います。スタイルは原作の雰囲気をよく捕らえており、顔は特に目などがより優しくカワイイ感じになっていました。どの物語もコミカルな雰囲気で満たされていますし、読んでいるうちに笑ってしまうことでしょう。

原作のキャラ性を維持しつつもギャグに走り抜けることに全然不自然さを感じさせない所に作者の確かな力量を感じます。話につながり自体はありませんが時間軸は共有しているようです。お手本の模倣から脱して自身のスタイルを徐々に見つけていく過程の記録のような作品です。今までは走りのほか、登場キャラクターの顔と車見せもメインに描いてありましたが、今回は物語がいよいよ動き出した感じです。

漫画の中にタキシードを着た仮面の男が出てくるのは私の黒歴史を刺激して心がざわざわしましたね。二つをうまく組み合わせてシュールな笑いを提供してくれます。海に来た面々ですが、スクール水着に取り憑いた幽霊に勝負を挑まれます。面白いだけでなく元の作品が気になるような内容で、とても惹かれました。ただ、お話自体は良く出来てます。